十日えびすには、大阪ではキタに仕事場や住まいのあるひとは堀川戎、ミナミのひとは今宮戎に行く人が多いけれど、
じつは「えべっさん」と称されながら、
堀川と今宮はそれぞれ別の神様をおまつりしている。
堀川のえべっさんは西宮とおなじ、ヒルコ神。
日本の国土をおつくりになったとされるイザナギ・イザナミご夫婦の第一子で、海に流された神様。
今宮のえべっさんは京都とおなじで、事代主命(ことしろぬしのみこと)。
出雲と大和のあいだで、この世とあの世のまつりごとの役割をわかちあった「国譲り」に関わった、釣り好きの神様。
どちらも豊漁や海上交通の守り神。
西宮も今宮も大昔は浜だったし、堀川は近くに天満の市があったのと、舟運で貨物移動していたことでおまつりされたのだろう。
どっちがどうだから良い悪いはなくて、各地のえびす神社ではヒルコ神を事代主に、事代主をヒルコ神に置き換えてしまったところすらある。
七福神のなかでただひとり、日本神話に出てくる、純粋に日本の神様とされてはいるが、蝦夷(えぞ)や東夷(あずまえびす)、夷狄(いてき)のように、大和朝廷に害なす異民族を「夷(えびす)」と呼んできたことから、
どうも、もともとは日本の神様というのは信じがたい。