えべっさんの小宝(笹飾り)は真っ先に吉兆を。

十日えびすでは、拝殿で祈念したあと、参詣者は笹に小宝という、
米俵や小判や鯛などを模した縁起物を笹につけた福笹を求めて帰る。

なぜ笹を賜るのかについては、それぞれのえびす神社で、
松竹梅の竹だからとか、釣り竿になる材料だからとか、いろいろ由緒を語っておられるが、
他の神社やお寺のお祭りに授かるもののいわれに比べるとかなりこじつけな感じが拭えない。

そのなかで、京都のえびす神社でのいわれによると、約400年前の江戸時代に、現在の宮司さんの直系のご先祖にあたられる当時の宮司さんが、
お参りに来る商人さんにお店の商売繁盛がかなったら、御神酒(おささ)をお供えされるよう求められ、そのおしるしに、「お笹」をお返しするという、粋なはからいをされたのがはじまりなのだそうで、場所柄、花街祇園の南のはずれにあることからも、遊び心もあるこの説が一番しっくりくる。

今宮えびすの福笹は、山から切り出してきたそのままの笹のえだを拝殿の両隅で男衆からもらって、拝殿左右の長屋根に並んで座っている、毎年コンテストで選出された福娘に小宝を一つ一つ付けてもらう。
市場で買い物をするような段取りと、福娘につけてもらうことが今宮えびすのお詣りの最大の楽しみだ。

そういえば大学時代、アイドル的存在だった同級生が福娘に選出されて写真を撮るべく全日通ったことがある。

福娘たちは交替や、期間中の行事にも出たりするので、人出が足りない時間はアルバイトの巫女さんや福娘OGが混じっていたりして、それぞれにかわいらしいお嬢さんたちなので通い慣れないかたには誰が福娘か区別が難しいが、
福娘は金烏帽子をかぶっているので、それを目印にお好みの女の子の前の列に並ばれるのがよかろう。

そういうわけで今宮えびすでは小宝は参詣者が自分で選ぶ必要があるが、
小宝には必須のものがひとつあって、それは「吉兆(きっちょう)」というもので、
あらゆる小宝がさらにミニチュアになってまとめたようなものがあり、じつはこれひとつ付けていれば、もう立派に福笹になる。

他の小宝は要するに、吉兆の強化オプションなので、本体の吉兆がついていないのにオプションだけではご利益も完全にならないというか。
どれが吉兆かわからないのであれば、福娘にたずねられるか、金額でおまかせすると、まず間違いなく最初に付けてくれる。